妊娠中のうなぎ|ビタミンAの基準を、数字で確かめる

「妊娠中はうなぎを控えたほうがいい」。そう聞いて、土用の丑の日を前に迷っている方がいらっしゃると思います。何がどう問題なのか、どのくらいなら差し支えないのか。調べても、断定的な書き方と曖昧な書き方が混ざっていて、かえって分からなくなる。
京都でうなぎ料理を専門にしている京うな和が、この話の中身を公的な基準の数字から確かめます。
先にお伝えすると、この記事では「食べてよい」とも「食べてはいけない」とも書きません。 妊娠の経過も、体質も、普段の食事も人によって異なり、それを踏まえて判断できるのは主治医だからです。この記事にできるのは、判断に必要な数字を、出典つきで並べることです。
数字を確かめてから、実際の受け止め方に進みます。
- 何が問題とされているのか — ビタミンAの話です
- 基準の数字 — 厚生労働省の食事摂取基準を見ます
- うなぎに入っている量 — 文部科学省の成分表を見ます
- どう受け止めるか — 重なるものと、相談のしかた
妊娠中のうなぎが話題になるのは、なぜでしょうか
うなぎに含まれるビタミンAの量が理由です。
ビタミンAは、体に必要な栄養素です。厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2025年版)」には、ビタミンAは体内で合成できないが、胎児の発達にとって必須の因子であり、胎盤を経由して母体から胎児に供給されていると記されています。足りないことも問題になる栄養素だということです。
一方で、同じ資料には、過剰に摂った場合の指標も定められています。妊娠中に話題になるのは、この過剰側の話です。
大事な前提が2つあります
① 問題になるのは「レチノイド」の側だけです。
食事摂取基準には、プロビタミンA(カロテノイド)からビタミンA(レチノイド)への変換は厳密に調節されており、カロテノイドを大量に摂取しても過剰症を生じるレベルまでレチノイドに変換されることはないと記されています。したがって、耐容上限量はビタミンA(レチノイド)に対してのみ定められ、プロビタミンA(カロテノイド)は含めないとされています。
つまり、にんじんやかぼちゃのような緑黄色野菜のβ-カロテンは、この話の対象外です。問題になるのは、動物性食品に含まれるレチノールの側です。
② 報告されているのは、極端な摂り方です。
同じ資料には、「過剰摂取による健康障害が報告されているのは、サプリメントを大量に摂取した場合や動物の肝臓を大量に摂取した場合である」と明記されています。
日常の食事ではなく、サプリメントやレバーの大量摂取が過剰症の対象として扱われています。
ビタミンAの基準は、どうなっているのでしょうか
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2025年版)」から、関係する数字を並べます。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 成人女性(18歳以上)の推奨量 | 650〜700 μgRAE/日 |
| 成人の耐容上限量 | 2,700 μgRAE/日 |
| 妊婦の付加量(初期・中期) | +0 μgRAE/日 |
| 妊婦の付加量(後期・推奨量) | +80 μgRAE/日 |
耐容上限量が2,700になっている理由
同資料には、成人では肝臓へのビタミンAの過剰蓄積による肝臓障害を指標にし、最低健康障害発現量を13,500μgRAE/日とし、不確実性因子を5として耐容上限量は2,700μgRAE/日としたと記されています。
13,500という数字を、5で割った値が2,700です。安全側に大きく余裕を取った値であることが、この計算から分かります。
妊婦についての記述
妊婦・授乳婦の耐容上限量については、次のように記されています。
妊婦では、ビタミンA過剰摂取による胎児奇形の報告を基に、健康障害非発現量を4,500μgRAE/日、不確実性因子を1.5とすると、付加量も含めた耐容上限量は3,000μgRAE/日となるが、成人と同じ2,700μgRAE/日を参考とすることが望ましい。
そして、妊婦・授乳婦の耐容上限量について、独自の値は設定しないこととしたとされています。
ここから読み取れること
- 妊婦向けに、特別に厳しい上限が設定されているわけではありません
- 計算上は3,000という値が出るが、成人と同じ2,700を参考にするのが望ましいとされています
- 根拠になっているのは、健康障害非発現量4,500μgRAE/日という値です
付加量が「初期・中期+0」である理由
同資料によると、37〜40週の胎児では肝臓のビタミンA蓄積量は1,800μg程度であり、この時期の体内貯蔵量を肝臓蓄積量の2倍として3,600μgのビタミンAが妊娠期間中に胎児に蓄積されます。母親の吸収率を70%と仮定し、最後の3か月でこの量のほとんどが蓄積されます。したがって、初期及び中期における付加量を0(ゼロ)とし、後期における推奨量の付加量を80μgRAE/日としたと記されています。
妊娠初期はビタミンAを増やす必要がないことを示しています。
うなぎには、どれだけ入っているのでしょうか
文部科学省の食品成分データベース(日本食品標準成分表2020年版・八訂 増補2023年)から、可食部100gあたりのビタミンA(レチノール活性当量)を挙げます。
| 食品 | ビタミンA(レチノール活性当量) | エネルギー |
|---|---|---|
| うなぎ かば焼 | 1,500 μg | 285 kcal |
| うなぎ 白焼き | 1,500 μg | 300 kcal |
| うなぎ 養殖・生 | 2,400 μg | 228 kcal |
焼いたうなぎ100gで1,500μgRAE。これが、この記事の中心になる数字です。
成人女性の推奨量は650〜700μgRAE/日ですから、100gで推奨量の2倍を超える計算になります。一方、耐容上限量は2,700μgRAE/日です。
一食で、上限を超えるのでしょうか
うなぎ100gだけを見れば、1,500μgRAEは2,700μgRAE/日を超えません。
ただし、いくつか注意して見るべき点があります。
- 一人前が100gとは限りません。 うな重やひつまぶしに使われるうなぎの量は、店やメニューによって異なります。1匹丸ごと使う品、1.5匹を使う品もあります。100gという単位は、成分表の基準であって、一人前の量ではありません。
- 一日の合計で見る値です。 耐容上限量は「一日あたり」の値です。うなぎ以外からもビタミンAは入ります。
- 肝は別に考える必要があります。 前の節で見たとおり、報告されている過剰摂取は動物の肝臓の大量摂取によるものです。うなぎの肝(肝吸い、肝焼き)は、身とは別に考える必要があります。
- サプリメントと重なると、話が変わります。 ビタミンAを含むサプリメントを飲んでいる場合、食事からの分と足し合わせることになります。食事摂取基準が名指ししているのは、まさにこの摂り方です。
何と重なると、上限に近づくのでしょうか
動物のレバー。 豚レバー、鶏レバーはビタミンAが特に多い食品です。同じ日にレバー料理を食べる場合は注意が必要です。
うなぎの肝。 上と同じ理由です。
ビタミンAを含むサプリメント。 マルチビタミンにも含まれていることがあります。成分表示を確認してください。
レチノール配合の医薬品。 皮膚科などで処方される薬に含まれる場合があります。処方を受けている方は、必ず主治医に伝えてください。
一方で、緑黄色野菜のβ-カロテンは、この計算に入れません。 前の節で見たとおり、食事摂取基準は耐容上限量をレチノイドに対してのみ定めています。
時期によって、違いはあるのでしょうか
食事摂取基準の設計を、もう一度確認します。
付加量は、初期・中期が+0、後期が+80μgRAE/日です。これは「必要量」の話です。
耐容上限量については、妊娠の時期による区別は設けられていません。 妊婦・授乳婦について独自の値を設定せず、成人と同じ2,700μgRAE/日を参考とすることが望ましい、とされています。
一般に器官が形づくられる妊娠初期に注意が向けられがちですが、食事摂取基準そのものは時期別の上限を定めていません。
どの時期にどう注意するかは、主治医の判断です。 妊娠の経過は人によって異なります。
結局、食べてよいのでしょうか
この記事では、その答えを書きません。
理由は3つあります。
- 一人前の量が分からないと計算できません。 店やメニューによって、使ううなぎの量が異なります。
- 他の食事との合計で決まります。 その日、その週に何を食べるかによって変わります。
- 妊娠の経過と体質は人によって異なります。 サプリメントの服用、処方薬、既往、経過。これらを踏まえて判断できるのは主治医だけです。
お伝えできるのは、次のことです。
- 基準の値は2,700μgRAE/日(成人と同じ値を参考にするのが望ましいとされる)
- 焼いたうなぎ100gには1,500μgRAE
- 過剰摂取の健康障害として報告されているのは、サプリメントの大量摂取と動物の肝臓の大量摂取
- 緑黄色野菜のβ-カロテンは、上限の計算に入らない
この数字を持って、健診のときに主治医に聞いてください。 「うなぎを食べてよいですか」ではなく、「うなぎ100gで1,500μgRAEですが、どのくらいなら差し支えないでしょうか」と聞くほうが、具体的な答えが返ってきます。
お店で気をつけること
実際にお店に行かれる場合の、実務的な注意点です。
量を選べるか確認する。 小さめのサイズを用意している店では、そちらを選ぶという方法があります。
肝の扱いを伝える。 肝吸いが標準で付く店もあります。外してほしい場合は、注文のときに伝えてください。
取り分けるという選択。 同席の方と分ける形にすれば、量を減らせます。
加熱されたものを選ぶ。 うなぎは加熱して提供される料理ですが、妊娠中は生ものを避けるよう指導されることがあります。お刺身などの一品を頼む場合は、この点も踏まえてください。
体調がよくない日は無理をしない。 妊娠中は、においや脂に敏感になることがあります。
京うな和でできること
京うな和は、京都でうなぎ料理を専門にしている店です。四条堺町、清水はなれ、祇園八坂の三店舗で営業しています。
大きさをお選びいただけます。 2026年9月時点の公式サイト掲載の内容では、大きなうなぎを半分使用した「小さめひつまぶし」と、うなぎ4分の3尾を使用した「小さめ上ひつまぶし」をご用意しています。量を控えめにされたい方に向いた品です。
肝を使った品は、別のメニューです。 肝焼き、肝入り上合わせ重は、それぞれ独立したお品としてご用意しています。肝吸いへの変更も、お客様のご希望に応じた対応です。ご注文時にお申しつけください。
個室を完備しています。 店内は和風モダンな雰囲気で、団体様、御家族様、個人様のいずれにも対応できる店づくりになっております。ゆっくりお過ごしいただけます。
うなぎ・米・たれの三つにこだわっています。 うなぎは全国から厳選した、大きく良質な特大肉厚うなぎ。米は長野県の農家と特別契約し、玄米のまま仕入れて毎日使う分だけ精米しています。たれは、この道四十年の職人が杉の桶で熟成させた生引醤油と昔ながらのたまり醤油を合わせ、極上みりんとざらめで寝かせた逸品です。
メニューの内容と営業時間は店舗によって異なります。四条堺町、清水はなれ、祇園八坂の各ページでご確認のうえ、ご来店ください。お品書きは本店のお品書きに掲載しています。
なお、お食事の可否や量については、必ず主治医にご相談ください。京うな和は、医学的な判断を行う立場にはありません。
よくある質問
Q. 妊娠中にうなぎを食べると、どうなりますか。
厚生労働省の食事摂取基準では、ビタミンAの過剰摂取による胎児奇形の報告を基に、健康障害非発現量を4,500μgRAE/日として耐容上限量が検討されています。ただし、実際に過剰摂取による健康障害が報告されているのは、サプリメントや動物の肝臓を大量に摂った場合に限られます。個別の判断は主治医にご相談ください。
Q. うなぎ100gにビタミンAはどれだけ入っていますか。
文部科学省の食品成分データベースでは、うなぎ かば焼100gあたり1,500μg(レチノール活性当量)です。養殖・生では2,400μgです。
Q. 妊婦の耐容上限量はいくつですか。
厚生労働省の食事摂取基準では、妊婦・授乳婦について独自の値は設定されておらず、成人と同じ2,700μgRAE/日を参考とすることが望ましいとされています。
Q. 妊娠初期は特に注意が必要ですか。
食事摂取基準では、耐容上限量に妊娠の時期による区別は設けられていません。ただし必要量の付加量は、初期・中期が+0、後期が+80μgRAE/日とされています。どの時期にどう注意するかは、主治医の判断に従ってください。
Q. にんじんやかぼちゃも控えるべきですか。
食事摂取基準では、耐容上限量はビタミンA(レチノイド)に対してのみ定められ、プロビタミンA(カロテノイド)は含めないとされています。緑黄色野菜のβ-カロテンは、この上限の計算には入りません。
Q. 肝吸いはどうすればよいですか。
動物の肝臓はビタミンAが特に多い部位です。気になる場合は、ご注文時に店へお伝えください。個別の判断は主治医にご相談ください。
まとめ
- 妊娠中のうなぎが話題になるのは、ビタミンA(レチノイド)の量が理由
- 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、成人の耐容上限量は2,700μgRAE/日
- 妊婦・授乳婦について独自の値は設定されず、成人と同じ2,700μgRAE/日を参考とすることが望ましいとされている
- 根拠は、胎児奇形の報告を基にした健康障害非発現量4,500μgRAE/日と不確実性因子1.5
- 必要量の付加量は、初期・中期+0、後期+80μgRAE/日
- 文部科学省の食品成分データベースでは、うなぎ かば焼100gに1,500μgRAE、養殖・生に2,400μgRAE
- 過剰摂取の健康障害が報告されているのは、サプリメントや動物の肝臓の大量摂取
- 緑黄色野菜のβ-カロテンは、上限の計算に入らない(レチノイドのみが対象)
- 重なりを意識したいのは、レバー・うなぎの肝・ビタミンAのサプリメント・レチノール配合の医薬品
- 可否と量の判断は主治医へ。この記事の数字を持って相談してください
- 京都の京うな和では、量を控えめにされたい方に向けた小さめの品もご用意しています
この記事について
この記事は、京都でうなぎ料理を専門にしている京うな和がお届けしています。
ビタミンAの推奨量・耐容上限量・妊婦の付加量、および過剰摂取に関する記述は、厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書の脂溶性ビタミンの章に基づいています。栄養成分の数値は文部科学省「食品成分データベース」(日本食品標準成分表2020年版・八訂 増補2023年)に基づいています。掲載した数値は食品としての標準的な値であり、店で提供される一人前の値ではありません。
本記事は一般的な情報の提供を目的としたものであり、個別の医学的助言ではありません。妊娠の経過、体質、服用中のサプリメントや医薬品、普段の食事の内容は人によって異なります。お食事の可否と量については、必ず主治医にご相談ください。京うな和は、医学的な判断を行う立場にはありません。
参考文献
- 厚生労働省「『日本人の食事摂取基準(2025年版)』策定検討会報告書」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html
- 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」 https://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/mext_00001.html
- 京うな和「本店 お品書き」 https://kyo-unawa.com/menu/


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